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脳波計測結果のスペクトル解析は、通常は、被験者1名あたり約35分の連続計測データの中から、動揺暴露直前の閉眼・開眼安静状態において各12秒間、動揺刺激暴露中は開始直後を含め、5分間隔で被験者の心理状態の聞き取り調査直前の12秒間、動揺暴露終了後の開眼・閉眼安静状態各12秒間のデータを各チャンネルについて切り出し、ノイズ除去のためのフィルタリングの後、FFT法によるスペクトル解析を行った。スペクトル解析におけるリサンプリング間隔は計測時と同じとしてある。(sampling interval:5msec;sample rate:200Hz)
ノイズ除去のためのフィルタリングは、適用周波数範囲のdo−notthing filterのインパルス応答を用いて、原データとの畳込み積分によった。
図2.2.3−12に頭頂位置(Cz)で計測されたスペクトルの変化を1分ごとに解析した例を示す。図に示されるスペクトルを求める前に、4−13Hzバンドパスフィルターによる処理が行われているため、0・4HZ,13Hz以上の誘発電位のスペクトル密度はゼロとなっている。安静状態で30分間計測された脳波の周波数特性は、α波が卓越して出現しており、5分母の短い会話の際には、このα波のパワーが低下することが分かる。また、会話の直後にはθ波が顕在化することも明瞭である、一方、動揺暴露によって嘔吐にまで至った被験者の場合には、嘔吐直前にいったんパワーの低下が見られるものの、動揺開始直後からθ波のパワーが連続して卓越しており、嘔吐時にはα、θ両波の周波数領域のパワーが極めて高くなる。安静時の脳波の時間的変化のパターンはここに掲げた例とほぼ同様であるが、動揺に暴露した被験者の場合には変化のパターンは多様である。これは、被験者の身体的、精神的健康度、実験時の心理状態等が全ての被験者について同じではないこと、同一の被験者の場合でも、何時でも同じ心理状態でないこと、即ち、個人差、場合差に起因すると考えられるが、類型化することはできなかった。心理状態、生理状態の変化の計測結果との関連を詳しく調べることが必要である。
一方、後頭部中央位置(Pz)の脳波の平均パワーの時間的変化を5分間隔で調べた例を図2.2.3−13に示す。図は、各ケースについて上から、被験者の酔いの程度・不快度、全平均パワー、全平均パワーに対するθ波、α波、β波のパワーの比を、また、図の横軸は動揺暴露の時間的経過を示している。酔いを発症した被験者、嘔吐した被験者に関しては全パワーは酔いを発症しない被験者に比べて全般に高く、しかも変動の大きいことが示されている。また、θ波の平均パワーは嘔吐者の場合に高い傾向が見られる。しかし、図2.2.3−1日こもその例が示されているとおり、アーティファクトの影響がθ波には強く現れていることから、必ずしもθ波に相当する周波数帯の活動電位が顕在化したためとは言えないので、さらに詳しい検討を必要とする。
更に、安静時にも、動揺暴露時にも、脳波記録波形の振幅の比較的緩やかな変動が見られる例がある。waxing−waningとして知られている現象である。θ波のピークより包絡線を求めて、この包絡線のスペクトル解析を行った例を図2.2.3−14に示す。図の例では、酔いの発症がない場合には、変動のスペクトル密度が、低周波数側に偏在してみられるが、酔いを発症した例ではこのような傾向は見られない。むしろ、振幅変動が減る傾向にある。もしこのような傾向があるならば、更に詳しい解析を継続して、医学的、心理学的見地からの検討を必要とする。
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スペクトル解析は、一見不規則な現象の特性を把握するために、時間領域で得られる現象をフーリエ変換を用いて周波数領域に写像し、周波数特性を調べて現象の性質を理解するために用いられる極めて有用な手法であることは言うまでもない。しかし、いったん周波数領域に写像すると、原信号が

 

 

 

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